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ママDrに聞いてみよう!「男性医師の育児休暇」

 男性の育児休業取得促進のための法整備が進みつつあり、パパになる男性医師にも育児休暇取得への意識が少しずつ進んできているのではないでしょうか。

今までは男性医師が育児休業を取得するという前例がなかったということもあり、取得に躊躇っている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はママDr側からの意見として、男性医師の育児休暇の取得についてまとめてみました。

男性の育児休業について

 子が1歳(一定の場合は、最長で2歳)に達するまで(父母ともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達するまでの間の1年間)、申出により育児休業の取得が可能。

また、産後8週間以内の期間に育児休業を取得した場合は、特別な事情がなくても申出により再度の育児休業取得が可能。1)

 育児・介護休業法でこのように定められています。男性医師でも、本来ではれば育児休業を取得できるはずですが、今までは勤務が忙しい、立場上取得できない、医師自身に取得するという意識がない、などで取得したことがある医師は少ないのではないかと思います。

夫が育児休業を取得するメリット

・産後早い時期の取得

 退院後から新生児期に夫が休暇を取ることの最大の理由は、「産後の母体を休めるサポートをする」だと思います。里帰りをしたり、両親などのサポートが得られたりする場合も多い時期ではありますが、夫婦でこの時期を乗り越えることにした場合は夫のサポートが不可欠です。赤ちゃんのお世話だけでなく、家事や買い物など体を使う仕事は夫が中心となって担うつもりでいましょう

毎日顔が変わると言われる新生児期に、お父さんも赤ちゃんと深く関われ、おむつ替え、授乳、沐浴などのお世話の手技も取得でき、その後の育児シェアもスムーズになるかと思います。

・産後2-3ヶ月の取得

 里帰りなどから帰ってきて、いよいよ夫婦中心の育児が始まるというタイミングでの育児休業の取得です。乳児期のどの時期で取得するかにもよりますが、赤ちゃんの睡眠リズムが確立するまでの間は、夜間も頻回に授乳したりする必要があります。その頃では夜間の授乳のサポートをすることや、逆に日中に母の睡眠時間を確保するために、家事や育児などを担うなどの役割分担をすることができます。また、産後の母体の回復が長期に渡る場合は、赤ちゃんの世話も中心に行う必要があるかもしれません。赤ちゃんの成長が著しい時期、時間に余裕を持って接することができ、父も積極的に育児に関わることができると思います。

 長期的な家事育児分担を見据えながら育児休業時期を過ごすことで、その準備期間にできます。

・妻の育児休業明けの取得

 妻が仕事に復帰した直後に、育児の中心を担うパターンです。産後1歳2ヶ月まで延長することができるので、妻が1歳で育児休業から復職した後に2ヶ月取得することができます。復職直後の慌ただしい時期、また保育園への登園が始まる時期に合わせて取ることで、新しい生活リズムへの移行がスムーズになると思います。

特に、復職と同時に保育園に入園する場合は慣らし保育が1-2週間程必要になるので、妻のみで復職と慣らし保育をこなすのは負担が重く感じられることもありますので、夫婦で協力して行えると、妻の職場復帰もスムーズになると思います。

・2人目以降の場合

 上の子の年齢にもよりますが、まだまだお世話に手が掛かる場合、赤ちゃんと上の子の両方のお世話をするのに大人の手が必要なことがほとんどです。特に新生児期や、外出が難しい時期の場合、送り迎えや日中の外出は母だけでは難しいと思います。

また赤ちゃんにかかりきりになってしまうことへのフォローが必要な年齢の場合もあるでしょう。こうした場合は、夫は上の子のお世話にも深く関わることになると思います。また2人目以降の育児について、どのように手が掛かるのかを具体的にイメージすることができると思います。

育児休業の不安点デメリットなど

・前例がない

今まで男性医師が育児休業を取得する、という意識がある病院はなかなかなかったのではないでしょうか。周囲の理解を得るのに時間を要するかもしれません。また自分の職務に穴を空けることへの抵抗感も、ご自身にもあると思います。家庭状況での必要性、職場での人員の必要性などから、周囲との調整を進めていくことが必要かとは思いますが、「前例がない」ことで育児休業の取得を躊躇っていたら、ずっと前例がないままです。一歩踏み出すことで、後から続く後輩医師の役にも立つのではないでしょうか。ちなみに筆者の職場では、ほぼ同時期に妻の出産を迎える2人の男性医師達が、初めて2人続いて取得しました。もしこうした機会に恵まれたら仲間を作って育児休業取得へ動き出しても良いかもしれません。(業務調整は必要ですが)

 ・研修、研鑚に支障が出る

 初期研修医、後期研修医などの若手医師の場合、一番心配になる点なのではないでしょうか。筆者の職場で現在取得経験あり、取得予定が4人になりますが、1-2ヶ月の短期間取得、外来と当直は継続という形で育児休業に入りました。その期間であれば、元々の人員にもよりますが、大きな人手不足に陥ることなく、またキャリアにも支障なく育児休業が取得できていると思います。

研修期間での中断期間に制限があるかどうかは事前に調べ、職場との調整もしっかりしていくことで、大きな障害とはならないのではないでしょうか。

経験者が語る、育児休業よかった点

2人目の誕生後、2ヶ月の育児休業を取得した中堅医師の場合   

妻の1日の様子が分かり、育児に専念することの大変さへの理解が深まった

育児に関わる中で、サポート・分担が必要な場面や内容を知った   

夫婦相互理解と育児分担の意識が高まり、家族関係にも好影響があった   

自身の中で家庭と仕事の両立、バランスを考え直すきっかけになった   

家族との距離が縮まった。(特に上の子供と濃密な時間が過ごせた)   

医者人生の数ヶ月と、子育て時期の数ヶ月は全く価値が違う!   

育休期間だけでなく、その後の長い子育てに於いて、育休を取得しての経験がある事で、育児に積極的に関わる姿勢が得られたことが一番の収穫である。

とのことでした。それぞれの家庭での家事育児のニーズ(どんな場面で夫も育児に参加する必要があるか)、妻の職場復帰プラン、夫のキャリアプランや職場の理解などを考慮し、男性医師も育児休業が取得していけるようになればと思います。少しずつ前例を作っていくことで、夫婦ともに育児に積極的に参加できる社会になればと願っています。

〈脚注〉

1) https://ikumen-project.mhlw.go.jp/company/system/