妊娠・出産をされた先生にとって、考えていくことの一つに「どうやって仕事に戻っていくのか」があると思います。特に初めての妊娠・出産だと、どういう生活になるのか思い描きにくく、計画も立てにくいかもしれません。
今回は、育児休暇も軌道に乗ってきて復帰を考えるにあたり「どのような方法があるのか」をご紹介してみたいと思います。周りに同じような立場の先生がいらっしゃらない場合などの参考にして下さい。
※今回は、常勤勤務をなさっている先生が利用できる制度を中心に執筆しています。非常勤勤務をなさっている先生は参考程度に、ご自身でも利用できる制度などをお調べ下さい。
育児中に利用できる制度
育児休暇
現行では、原則子供が1歳になるまで(保育園に入れない場合等は最長2歳まで)取得可能です。また分割取得は出来ないので、一旦復帰してしまうと再取得はできないので注意が必要です。
また令和4年4月からは出生時育児休暇制度として、産後パパの育休制度の雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置が義務化され2)、男性の先生の育休の取得も夢ではなくなってくると思います。また再取得についても、制度が変わってくるかも知れません。
育児休業中の就労
育児期間中に就労することは基本的には想定されていません。しかし、労使の話し合いによっては、臨時的にその事業主の下で就労することができます。就労が月10日(10日を超える場合は80時間)以下であれば、育児休業給付金を受け取ることができます。4)
短時間勤務制度1)
雇用期間が1年以上の場合、3歳未満の子を養育している間、1日の所定労働を原則として6時間とする制度です。細則や申請方法は、勤務先に確認して下さい。
育児時間制度
1歳未満の子供を育てながら勤務している女性の場合、30分の育児時間を2回取得することができます。時短勤務との併用もできます。3)
復帰の方法
先述の制度を駆使して復帰していくことも可能です。
育児休暇中
スポット勤務:就労先ではない場所で行うこともできます。まだ子供が小さい時や、子供を外部に預けるのが初めてといった時などは、スポット勤務から始めると安心です。就労先で、月80時間以内で勤務を再開するという方法もできます。職場の雰囲気や感覚を取り戻すことができます。
育児休暇中に少しずつ復帰するメリットは、育児休暇という立場を守りながら就業することができることです。少し勤務してみて、まだ時期が早そうだと感じたら再度就業時間を減らす事ができます。
育児休暇後
月80時間を超えるようになった場合、育児休暇は終了となります。短時間勤務制度や育児時間を利用することで、フルタイムよりは短時間の勤務に就くことが可能です。
時間の融通が利きやすい業務内容から開始すると、負担感が少ないかもしれません。
例えば、検査・健診業務から、病棟勤務から…などです。診療科や勤務先の診療形態によって、融通が利く業務とそうでないものとがあると思います。
筆者や周囲のママの経験例
・育児休暇を利用し少しずつ復帰
育児休暇中から、月80時間以内で少しずつ、検査や健診業務から復帰。1-2ヶ月程度経った後に時短勤務として、出勤時間や退勤時間を調整して勤務開始。2-3ヶ月程度経った後にフルタイム勤務に戻る。フルタイムに戻った後は、保育園のお迎え時間が律速となりながら退勤する。
こうした例がほとんどでした。フルタイムに戻る目安としては、「子育てしながら仕事もする」という生活パターンが安定してきて、出勤の不安がなくなってくることだと感じました。
そうなってくると、手術にも入れるようになり、仕事内容も、育児休暇以前に戻る感触が得られると思います。(筆者は外科系)
また筆者の勤務先では外来が主治医制で代診が立てづらいこともあり、外来復帰は子供が一通り熱を出し終わったり、病児保育が確保できるようになったりした後が良いとアドバイスをもらいました。
復帰した頃の最初の心配事は、業務開始時間までに病院に到着できるかどうか、でした。その心配が解消されるように環境調整を行っていくと良いかも知れません。
・最初からフルタイム勤務で復帰
第二子目で、ブランクを開けたくないとのことで、直接フルタイム復帰された先生もいました。子育ての様子や勝手が分かっている点と、ご主人さんのお仕事も時間の融通が利きやすい点が復帰を可能にしたポイントだと教えてもらいました。
・番外編~大学院や留学中など~
筆者の勤務先は大学病院ではないため、周囲には経験者はおりませんが、選択肢としては可能だと思います。勤務時間の調整がある程度つきやすい、臨床から離れているので体力面の心配が少ない、などといったメリットがあると思います。
職場と相談しておくこと
・いつ頃復帰予定か
・復帰後の勤務形態
・復帰後しばらくして目指す勤務形態
・利用できる制度の確認
産前休暇の取得前に、ご自身が考えていることと、職場で対応できることを概ね擦り合わせておきましょう。実際に出産、子育てしてみないと分からないことはたくさんありますが、まず自身がどう考えているのかを相談しておくと、職場でも復帰に向けての支援ができると思います。
以上、筆者やその周囲の経験からの、仕事の復帰方法でした。
診療形態や、勤務先の様子などでそれぞれ違った方法もあるとは思います。ご自身が妊娠・出産されるまで、労働者として利用できる権利については なかなか知る機会がないと思いますが、参考になれば幸いです。
小さい子供を育てながらの勤務は、周囲の理解が欠かせません。周囲との関係を円滑に保つように努力、感謝しながら、ご自身が目指す勤務形態を実現させていきましょう。
〈脚注〉
- https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/manual/doc/attention.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15420.html