産婦人科ママDrが解説「月経痛我慢していない？～将来妊娠を考えるあなたに～」

　学生時代から妊娠適齢期にかけて、勉強や仕事を一生懸命に頑張っている先生が多いと思います。

そんな先生の中で、月経痛があっても鎮痛薬使いながら我慢している方はいないでしょうか？

今回は、産婦人科医である筆者としては日常的に接している月経痛でも、他科の先生にとっては中々縁遠くご自身の事でも後回しにされがちな月経痛と、妊孕性との関連についてお話したいと思います。

月経痛・月経困難症

　簡単ではありますが、まずは疾患についてのお話をします。釈迦に説法で申し訳ありません。月経困難症とは、月経に随伴して起こる病的症状で、月経時あるいは月経直前より始まる強い下腹部痛や腰痛を主症状とします。

その他の随伴症状として腹部膨満や嘔気、頭痛などの症状があります。

若年では機能性が多く、プロスタグランジンなどによる子宮の過収縮が原因となります。

器質性の原因疾患としては、子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などがあります。

30歳以上から増加すると言われていましたが、最近では10～20歳での子宮内膜症も増加しています。¹⁾

初経を迎えて数年経ってから、段々と悪化する月経痛や月経困難がある場合、月経困難で日常生活に支障が出る場合は、器質性月経困難症も考えて一度検査を受ける必要があります。

　子宮内膜症とは、子宮内膜またはそれに似た組織が何らかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患、と定義されています。女性ホルモンの影響で、月経周期に合わせて増殖し、月経時の血液が排出されずにプールされたり、周囲の組織と癒着して痛みをもたらしたりします。

20～30代で発症することが多く、そのピークは30〜34歳にあると言われています。主な症状は「痛み」と「不妊」です。²⁾

月経困難症を認める場合は、将来の子宮内膜症の罹患率が高い(オッズ比2.6;95%CI,1.1~6.2)、月経痛の頻度が高い程子宮内膜症のリスクが上昇するというデーターもあります。¹⁾

　子宮内膜症と不妊との関連は明らかではありますが、子宮内膜症が妊娠を阻害するメカニズムに関しては十分には解明されていません。

³⁾妊娠がない状態では、年齢が上がるにつれて子宮内膜症の発症リスクが高まり、一度子宮内膜症を発症すると、その30-50%が不妊になるとも報告されています。¹⁾

そして、子宮内膜症がない方の月経周期毎の妊孕率は15〜20%であるのに対し、子宮内膜症がある場合は2〜15%に低下するという報告もあります。

また、妊孕性を改善させるための治療方法で十分なエビデンスがあるものはありません。³⁾

　以上のことから、月経痛を我慢していると子宮内膜症へと進展し、将来の不妊につながる可能性があるということがお伝えできたかと思います。

月経困難症の治療は鎮痛薬・漢方薬などもありますが、子宮内膜症進行予防の観点からは低容量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)内服が有効です。禁忌や慎重投与症例、血栓リスクがありますが、注意すれば多くの方には有益な治療だと考えられます。

不妊治療が保険診療になり、不妊治療がより一般的になるとは思いますが、その前段階の「不妊予防」というのも重要な考え方だと思います。現在は勉強や仕事に邁進し、いざ妊娠を考えた時に希望通りに妊娠できるように、月経痛を我慢しないで産婦人科医に相談して頂ければと思います。

〈脚注〉